株式会社百日草様
販売管理端末としてiPadを活用。出先での販売業務を迅速化
株式会社百日草様
美容技術の普及・促進を進める専門企業が、販売管理端末としてiPadを活用。出先での販売業務の迅速化・正確化を実現させた株式会社百日草の事例を紹介します。
業種:サービス業
従業員数:45名(2015年11月現在)
事業内容:出版、および美容業務用化粧品・着付け関連商品製造販売
美容技術の普及・促進を進める専門企業が販売管理端末としてiPadを活用 出先での販売業務の迅速化・正確化を実現
出版事業や美容用品の販売、各種講習会の実施などを通して、日本の美容界を支えている株式会社百日草は、出版物や海外の一流講師を招いた講習会などにより、長年、日本の美容界をリードしてきた美容技術の普及・促進を行う専門企業だ。現在も、全国各地で開催する講習会などを通し、日本の美容師の技術向上を支えている。同社では以前から、講習会の会場に販売ブースを設置し、美容師向けの商品を販売してきたが、限られた時間内での顧客対応の迅速化と正確化という課題に直面していた。そこで、iPadを中核にバーコードリーダー、モバイルプリンターを活用するソリューションによって、この課題を乗り越えることに成功した。
- 導入の狙い
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- 講習会ブースでの顧客対応の迅速化
- 講習会や顧客先における販売管理の正確化
- 導入効果
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- 講習会ブースで、迅速な顧客対応が可能になった
- 講習会や顧客先での販売業務が正確に行えるようになった
- 消費税の変化にスムーズに対応できる環境が構築できた
女性の自立支援のために美容の世界に飛び込む
株式会社百日草(以下、百日草)は、1948年の設立以来、70年近くにわたり日本の美容界をリードしてきた美容技術の専門企業だ。出版事業や美容用品の販売、各種講習会の実施などを通して美容界を支えてきた。
創業者の太田 勝男氏が、東京・本郷において百日草の前身であるニュールック社を立ち上げたのは、1945年の終戦後、東京にはまだ焼け野原が広がっていた頃のことだった。明日の食べ物にも事欠くこの時代に、彼が未経験の美容の世界に飛び込んだ背景には、「この国の復興には女性が活躍できる社会の実現が不可欠」という強い思いがあったという。勝男氏から数えて三代目にあたる、現・代表取締役社長の太田 昌孝氏は、その思いをこう説明する。
「海外先進諸国では、女性は男性と肩を並べて活躍していました。そうしたことから、日本が豊かな国になるには、やはり女性が活躍できる国を目指すべきと考えたようです。そのためにできることを考えた際に浮かび上がったのが、「美容」というキーワードでした。美容界は、今も昔も女性が男性と肩を並べて仕事ができる世界です。つまり美容界をサポートすることで、結果として女性の自立を支えることができると考えたのです。それが、この仕事を始めた理由であったと聞いています」
美容師の技術水準向上を目指した専門誌『百日草』の発行と共に産声を上げた同社は、コールドパーマ液の製造販売や、海外の一流講師の招聘などを通し、戦後日本の美容界の発展に貢献してきた。
美容サロンが提供するサービスは、ヘアメイク、着付け、ネイルなど多岐に及ぶ。その中でも特に着付けと日本独自のプロフェッショナルメイク技術に力を入れていることが、近年の同社事業の特徴だ。それを太田氏はこう説明する。
「美容師であれば、ヘアメイクは当たり前のこととして学びます。それ以外の部分でもお客様のニーズに確実に応えていくことは、美容サロンの課題と言うことができますが、着付けにはあまり目を向けられてこなかったのが実情です。また、着付けは日本の美容師だからこそ学べる、世界に通用する技能です。こうした考えから、当社は近年、着付けと古来より存続してきた和装メイクを応用した、日本でしか学べないメイク技術への特化という方向に舵を切りつつあります」
そこには、単に新たな文化を紹介するだけでなく、日本の伝統的な文化を伝えることも大切にした創業者の思いも反映されている。花嫁衣裳でも和装の良さが見直される中、こうした取り組みは同社の大きな強みになろうとしている。
「花嫁衣裳に限らず、東京五輪が決定した前後からは、一度着物を着てみたいという外国人も増えつつあります。また、着物に合ったメイクには、一般的な洋装メイクとは異なるテクニックや専用の化粧道具が必要になります。和装に合ったメイクと実際に見比べると、一般の方でもその違いは分かります。そうした違いを美のプロである美容師が正しく理解し、技術として確実に提供できるかたちを作っていくことが、強く求められていると考えています」と太田氏は語る。
わずか10分で30名に対応 販売管理の迅速・効率化が課題
着付けやメイクを学ぼうとしたとき、テキストだけではどうしても限界があるのが実情だ。そうした声に応え、百日草では出版事業と並行して、第一線の美容師に向けた講習会も積極的に行っている。優れた指導者を招いて全国で開催する講習会の評価は高く、毎回、多くの参加者で賑わっている。
だが、そこにはいくつかの課題があった。講習会には同社の営業担当も同行し、会場内で自社商品の出張販売を行っている。第一の課題は、その販売処理の迅速化だった。
同社はこれまで、講習会場の販売管理は紙ベースで行ってきた。具体的には、お客様の注文に応じて、営業担当が専用伝票に品目、単価、数量などを記入していくわけだが、この方法では、講習と講習の合間にある10分の休み時間内にすべてのお客様に対応するのは難しいのが実情だった。
「講習会には皆さん、ご自分の道具を持って参加されます。しかし講師の方が新しい道具を紹介すれば、試してみたいと考えますよね。当社の講習会は内容により定員30〜150名で、営業担当者一人当たりの応対人数は30〜40名ですが、時には講習終了と同時に全員が販売ブースに押し寄せるわけです。私自身も経験がありますが、その販売対応はよほど熟練しなければとても無理です」
同社の場合、講習テーマを問わず、販売ブースに一通りの商品を持ち込むことが一般的だ。講習会に参加するお客様が美容師である以上、どの商品も一定のニーズが見込めることがその理由である。それもあり、スムーズな対応を行うには、膨大な商品の品目と値段を把握することが求められる。
「ベテランの営業担当であれば、それも可能です。しかし営業職は流動性が高い職種です。当社の場合も、定着せず離れていく営業担当が常に一定の割合で存在します。それだけに、誰が担当しても確実に対応できる業務にしたいと強く感じていました」
そこには、さらにもう一つの課題があった。営業担当が講習会の販売ブースや営業先で記入した伝票は、帰社後に事務スタッフが販売管理システムに入力して、初めて売上処理が行われ、請求書が発行される仕組みになっていた。しかし、その入力作業にミスが頻発していたのだ。走り書きの手書き伝票の読み違いが、その最大の原因だった。
「ミスの原因を探っていくと、事務スタッフの読み違いだけでなく、営業担当の記載ミスや計算間違いなど、さまざまな原因がありました。お客様にご迷惑を掛けてはいけないというのは当然のことですが、それに加え、営業担当と事務スタッフのどちらに責任があるか不明確なため、なんとかしなければいけないと強く感じました」
現場の納得を目指し『FileMaker GO』を選択
解決のヒントになったのは、太田氏が偶然、金券ショップのレジで目にした、商品のバーコード一覧表とバーコードリーダーを使った販売管理システムだった。
「商品のバーコードを読み取り、個数を入力すれば、自動的にレシートが出力される様子を見て、『私が求めていたのはこれだ』と感じました」
そこで太田氏は、自社で使えるバーコードを利用したシステムを検討したが、導入するにあたり、機能的にも金額的にも現実的なシステムに出会うことはできなかった。また、システムの課題だけでなく、講習会場など出先からの利用にはVPN構築が必要になる。当時はまだ、ネットワーク側のハードルも高かったのがその理由だった。
数年後、同社は営業担当の持ち出し端末としてiPadを導入し、『SMILE BS2 販売』の顧客情報を社外から閲覧できる仕組みを構築した。それが、新たな販売管理の取り組みをスタートさせるきっかけになった。
「iPad導入からまもなく、小規模な小売業やサービス業などでの利用を前提としたiPadとハンディプリンターでレシートが出力できるアプリを知り、iPadをプラットホームにすることで、これまでの課題が解決できるのではと考えたのです」
もちろん、同社にとって単にレシートを出力するだけでは意味がない。そこで太田氏は、iPadとSMILEを連携させ、『SMILE BS2 販売』のPC画面に出先からもアクセスできるようにした。これにより外からも販売記録にアクセスしながら操作を行うことが可能になったが、しかし、まだ太田氏が満足できるものではなかった。
「PCでの操作を前提にするなら、『SMILE BS2 販売』の操作画面は、一度その操作性に慣れてしまうと、これほど便利なものはありません。しかし、キーボードやマウスのないiPad上で操作するのはとても無理だと判断しました。私が求めたのは、例えば、立ち食いソバ屋さんの店頭でもストレスなく使えるような操作感だったのです」
太田氏の要望を受け、あらためて提案したのがiPadやiPhone上でFileMakerソリューションが実行できる『FileMaker GO』の活用だった。『FileMaker GO』でiPadの画面サイズに最適化された操作画面を構築し、『SMILE BS2 販売』との連携を可能にするものだ。
「操作画面のサンプルを見せてもらい、これなら大丈夫だと判断しました。導入にあたり最も重視したのは、操作画面の作りこみです。当社の営業担当は、ITリテラシーが必ずしも高い者ばかりではありません。そういう社員でも直感的に使えるシステムにしたいと考えました」
操作画面のデザインは、現場の意見に基づき、入念に修正が加えられて構築された。
バーコード管理で迅速性と正確性を両立
『FileMaker GO』によるシステム導入の最大の成果として太田氏が挙げるのは、講習会場などにおける、正確な販売管理の実現だ。
「例えば、当社が取り扱っているプロの美容師のニーズを前提とした髪飾りは、100アイテムほどの商品が年3回のペースで入れ替わります。その全てを覚えるのも大変ですし、万が一でも受注ミスがあると、お客様にも大変なご迷惑をおかけすることになります。今回の新システムの導入によって、社外でも販売管理が正確かつ迅速に行えるようになったことが、最大のメリットと考えています」
今後の課題として太田氏が掲げるのは、営業担当の実績の可視化だ。
「いくつか方法はありますが、営業担当の実績を可視化できる仕組みはなんとしても導入したいと考えています。それによって管理職が不要になるとは言いませんが、やる気さえあれば、自律的に成績を上げていくことができる、そんなシステムの導入を今、検討中です」
長年、美容界を牽引してきた百日草は、IT活用を通し新たな歴史を刻もうとしている。
© 2016 FileMaker, Inc. FileMaker、ファイルメーカーおよびファイルフォルダロゴは、米国およびその他の国々におけるFileMaker, Inc. の商標です。
会社名、製品名などは、各社または各団体の商標もしくは登録商標です。
事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞等は取材当時のものであり、配付される時点では、変更されている可能性があることをご了承ください。
この記載内容は2016年1月現在のものです。