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知っておきたい 「令和6年の年末調整の実務ポイント」

専門家コラム

最終更新日:2024/10/ 1

寄稿者:北條 孝枝(株式会社ブレインコンサルティングオフィス・社会保険労務士)

令和6年の年末調整では、定額減税という今年度限りの特別な実務が発生します。その他にも、様式変更等も行われています。年末調整における昨年からの変更点と、実務ポイントを解説します。

令和6年の年末調整で対応が必要な主な改正点は、以下のとおりです。

  • 定額減税(年調減税事務)
  • 年末調整関係書類の様式変更
    • 給与所得者の扶養控除(異動)申告書(令和7年分)
    • 給与所得者の保険料控除申告書(令和6年分)
    • 給与所得者の基礎控除申告書・給与所得者の配偶者控除等申告書(令和6年分)

定額減税(年調減税事務)の手順

令和6年分所得税については、「定額による所得税額の特別控除(定額減税)」が実施されます。適用を受けることができるのは、令和6年分所得税の納税者である居住者で、合計所得金額が1,805万円以下(給与収入のみでは、2,000万円相当)である人です。

定額減税額は、本人と同一生計配偶者・扶養親族が対象となり、1人あたり3万円です。(従業員本人が定額減税の対象外となった場合は、同一生計配偶者・扶養親族がいたとしても、年調減税事務は実施しません。)令和6年の年末調整では、各従業員について提出された申告書から年末調整時点の状況を確認し、年調減税額を計算して、本人の所得税額を上限として所得税額から控除することになります。

年調減税事務は、住宅借入金等特別控除の計算を行った後に実施します。例として、国税庁が提供している源泉徴収簿を利用した計算方法で確認してみましょう。

計算方法①では、定額減税額を所得税額から全額控除できますが、計算方法②では、所得税額が0円のため定額減税額を控除することができません。控除しきれない額については、源泉徴収票・給与支払報告書の摘要欄に「源泉徴収時所得税減税控除済額×××円、控除外額×××円」というように記載します。

定額減税(年調減税事務)の実務ポイント

既に、月次減税を実施しているか否かにかかわらず、12月31日(年末調整実施時)の現況で年調減税を実施します。

合計所得(給与以外の所得を含む)で1,805万円を超えていても、扶養控除等申告書を提出している会社での給与収入が2,000万円以下の方は年末調整の対象ではありますが、年調減税の対象にはなりません。年末調整の対象者と年調減税の対象者は異なることがありますので注意が必要です。

次に、同一生計配偶者と扶養親族についての注意ポイントを確認しておきましょう。同一生計配偶者と扶養親族のうち、非居住者は定額減税の対象外となります。所得税の控除対象扶養親族となる親族であっても、定額減税では対象外になるというケースもありますので、「給与所得者の扶養控除等申告書」の赤枠で囲った以下の箇所を、しっかりと確認しておきましょう。

月次減税は6月1日の現況で実施しているため、6月2日以降に扶養親族の増減(子が生まれた、子が就職した、配偶者や子の収入が増え扶養を外れた)があった場合には、定額減税の対象者の人数が変更となり、月次減税額と年調減税額が異なるケースがあります。特に、扶養親族の減少により、年末調整の結果、徴収しなければならない所得税額が発生した場合は、従業員からの問い合わせが増えることも考えられます。徴収になった理由をしっかり回答できるようにしておくと良いでしょう。

定額減税は、本年限りの措置となります。対象者としてよいかどうか等、対応に迷った場合は、国税庁の定額減税特設サイトのQ&Aや電話相談センターを活用し、確認していくようにしましょう。

国税庁:定額減税 特設サイト
https://www.nta.go.jp/users/gensen/teigakugenzei/index.htm

給与ソフトの対応について確認を

定額減税では、従業員本人が対象となるかだけではなく、配偶者・扶養親族についても年末調整で控除対象となるかどうかを、所得・非居住者の条件を含め複数の条件で確認が必要です。お使いの給与ソフトが定額減税に対応していれば、定額減税の対象者の抽出や定額減税額の計算、源泉所得税額との精算も自動計算できるはずです。

年末調整事務担当者としては、従業員からの申告内容をしっかりと確認して、給与ソフトに情報を反映することがポイントとなります。貴社でお使いの給与ソフトの対応可否を確認しましょう。

年末調整関係書類の様式変更

税制改正により、年末調整関係書類の様式を簡易にする変更がされます。

給与所得者の基礎控除申告書・給与所得者の配偶者控除等申告書(令和6年分)については、定額減税への対応のため、定額減税に関する記載欄が追加となります。これは、令和6年度のみの変更です。その他の様式についての変更点は、以下のとおりです。

  1. 給与所得者の扶養控除(異動)申告書(令和7年分)
    以下の場合に、簡易な申告書で提出が可能になりました。
    • その年の前年に給与支払者に提出した扶養控除等申告書等の内容に異動がない場合には、記載すべき事項に代えて、異動がない旨の記載をする
    簡易な申告書を提出する場合のチェックリスト
    出典:国税庁リーフレット「扶養控除等異動申告書の提出について
  2. 給与所得者の保険料控除申告書(令和6年分)
    以下の欄が削除されました。
    • 「生命保険料控除」欄の「保険金等の受取人」欄のうちの「あなたとの続柄」欄
    • 「地震保険料控除」欄のうちの「保険等の対象となった家屋等に居住又は家財を利用している者等の氏名」に係る「あなたとの続柄」欄
    • 社会保険料控除」欄の「保険料を負担することになっている人」欄のうちの「あなたとの続柄」欄

以上、令和6年の年末調整の改正点と、実務上の注意点について解説しました。

今年の年末調整では、定額減税への対応や様式変更等、確認しておくべきことが多くあります。毎年のことですが、従業員からの情報収集や、社員情報等の変更を毎月の事務にプラスして実施する必要があるので、年末調整の実施時期から逆算し、早めにスケジュールをたてて、できるだけ効率的に実施していきたいですね。

筆者プロフィール

北條 孝枝(ほうじょう たかえ)

株式会社ブレインコンサルティングオフィス 社会保険労務士

メンタルヘルス法務主任者

会計事務所で長年に渡り、給与計算・年末調整業務に従事。また、社会保険労務士として数多くの企業の労務管理に携わる。情報セキュリティについての造詣も深く、実務担当者の目線で、企業の給与、人事労務担当者へのアドバイスや、業務効率化のコンサル等に取り組むとともに、実務に即した法改正情報、働き方改革などの企業対応に関する講演も多数行っている。

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