知っておきたい 新しくなる育児・介護休業法等① ~育児編、企業として早めに確認しておくべきポイントは?~

最終更新日:2025/1/15
寄稿者:北條 孝枝(株式会社ブレインコンサルティングオフィス・社会保険労務士)
2024年の通常国会で、育児・介護休業法、雇用保険法、次世代育成対策推進法の三法が改正されました。異次元の少子化対策の一つとして、「共働き・共育て」を推進し、男女ともに仕事と育児・介護を両立できるようにすることを目的としています。
2025年4月と10月に施行される改正育児・介護休業法では、企業に対して、これまで以上に子育てしやすい職場環境の整備が求められます。また、介護離職を防ぐため、介護に直面する社員への支援も強化されます。
各種措置の義務化により企業が対応しなければならない事項も増えているので、2025年に向けた早めの対策が必要です。
改正について、2回に分けて解説します。第1回目となる今回は、育児期の柔軟な働き方を実現するために、企業として求められる新たな雇用環境の整備や、雇用保険の給付等の内容について確認していきます。
法改正の概要
2025年4月と10月に施行される改正について、それぞれの概要をみていきましょう。
- 2025年4月1日施行
- 雇用保険の新たな給付
- 出生後休業支援給付
子の出生後の一定期間以内(男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内)に被保険者とその配偶者がともに14日以上の育児休業を取得する場合に、最大28日間、休業開始前賃金の13%相当額が給付します。これにより育児休業給付とあわせて給付率80%とし、税効果や社会保険料の免除等により、手取所得100%相当とします。 - 育児時短就業給付
被保険者が2歳未満の子を養育するために時短勤務をしている場合に、時短勤務中に支払われた賃金額の10%が給付されます(ただし、時短勤務開始前の賃金額を上限とする)。
- 出生後休業支援給付
- 子の看護休暇・介護休暇の取得条件等の変更
- 「子の看護休暇」の名称を「子の看護等休暇」に変更し、子の行事等での休暇取得も可能になります。
- 子の看護休暇について、勤続6か月未満の労働者を労使協定に基づき除外できる措置は廃止されます。
- 子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の義務化
- 所定外労働の制限を小学校就学前までに対象拡大します。
- 3歳未満の子を養育する労働者が、テレワークを選択できる措置を努力義務化します。
- 育児休業取得状況等の義務化
- 育児休業取得状況の公表義務が、従業員300人超の企業へと拡大されます。
- 100人超の企業について、一般事業主行動計画策定時に、育児休業取得等に関する状況把握・数値目標の設定が義務化されます。
- 雇用保険の新たな給付
- 2025年10月1日施行予定
- 子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の義務化
- 3歳以上、小学校就学前の子を養育する労働者に関する、「柔軟な働き方を実現するための措置」が義務化となり、事業主が選択した措置について、労働者への個別周知と意向の確認が義務化されます。
- 妊娠・出産の申し出があった時や子が3歳になる前に、育児の両立に関して労働者に個別の意向を聴取、配慮することを義務化します。
- 子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の義務化
企業として事前に検討が必要なこと
今回の改正で義務化される内容のうち、企業として検討が必要なのは、「柔軟な働き方を実現するための措置」です。その全体像を厚労省の資料で確認しましょう。

3歳から小学校就学前までの期間、フルタイム勤務で柔軟な働き方を実現できるように、事業主が下記の措置から2つ以上を選択することとなっています。
- (1)始業時刻等の変更
1日の所定労働時間を変更することなく、フレックスタイム制または、始業・終業の時刻の繰上げ・繰下げのいずれかを利用できる - (2)テレワーク(在宅勤務)等
1日の所定労働時間を変更することなく、勤務日の半数程度(週5日勤務の労働者の場合は1か月で10日、週5日以外の労働者については、その所定労働日数に応じた日数)とすること - (3)保育施設の設置運営等(ベビーシッターの手配及び費用負担等)
3歳になるまでの短時間勤務制度の代替措置における扱いと同様にすること - (4)新たな休暇の付与
子の看護等休暇や年次有給休暇の法定の休暇、とは別に付与されるもので、付与する日数に基準を設けること - (5)短時間勤制度
原則1日6時間とする措置は必ず設け、その上で他の勤務時間も併せて設定することが望ましい
(1)~(4)は、フルタイム勤務で育児との両立が可能な働き方を実現するための措置、と位置づけられています。これは、法令での最低基準であり、もちろん企業独自で法令を上回る制度を設けることは可能です。
制度の導入にあたり、従業員のニーズを確認していくことが、従業員の満足度を高めていくことに繋がります。また、業種や職種により、どの制度が導入できるか検討が必要です。
若者人口が急激に減少する2030年代に入る前までが、少子化傾向を逆転するラストチャンスになります。国としての財政水準や、様々な制度の存続が危ぶまれるような事態を招かないために、異次元の少子化対策として「年収の壁・支援強化パッケージ」や、今回の改正が打ち出されました。仕事と育児を両立しながら勤務する従業員が育児を理由として退職してしまうことは、優秀な人材の損失につながります。企業として両立支援をすることで、従業員のモチベーションアップや人材確保につなげていきたいものです。
第2回では、介護関連の改正について解説します。
筆者プロフィール
北條 孝枝(ほうじょう たかえ)
株式会社ブレインコンサルティングオフィス 社会保険労務士
メンタルヘルス法務主任者
会計事務所で長年に渡り、給与計算・年末調整業務に従事。また、社会保険労務士として数多くの企業の労務管理に携わる。情報セキュリティについての造詣も深く、実務担当者の目線で、企業の給与、人事労務担当者へのアドバイスや、業務効率化のコンサル等に取り組むとともに、実務に即した法改正情報、働き方改革などの企業対応に関する講演も多数行っている。
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