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知っておきたい 新しくなる育児・介護休業法等② ~介護編、企業として施行日までに準備しておくべきことは?~

専門家コラム

最終更新日:2025/1/23

寄稿者:北條 孝枝(株式会社ブレインコンサルティングオフィス・社会保険労務士)

2024年の通常国会で、育児・介護休業法・雇用保険法・次世代育成対策推進法の一部が改正され、5月31日に公布されました。「共働き・共育て」を掲げ、男女ともに仕事と育児・介護を両立できるようにすることを目的としています。

2025年4月に施行される改正育児・介護休業法では、介護離職を防ぐために雇用保険の給付の上乗せや、柔軟な働き方を実現するための雇用環境の整備等、制度を利用しやすくするための周知や意向確認を義務付けています。

第2回目は、介護関連の改正内容について確認していきます。

法改正の概要

2025年4月1日に施行される改正について、概要をみていきましょう。

  1. 労働者が家族(対象家族は、配偶者 (事実婚を含む) 、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫)の介護に直面した旨を申し出た時に、両立支援制度等について個別の周知・意向確認を行うことを事業主に義務付けます。
  2. 労働者等へ両立支援制度等に関して早期に情報提供を行うことと、雇用環境の整備(労働者への研修等)を事業主に義務付けます。
  3. 介護休暇について、勤続6か月未満の労働者を労使協定に基づき除外できる措置は廃止されます。
  4. 家族を介護する労働者に関し、事業主が講ずる措置(努力義務)の内容に、テレワークを追加します。

制度施行日までに企業として準備しておくべきこと

上記のうち、制度改正となる3については、就業規則等の改定や労使協定の見直しが必要となります。1・2については義務となるため、従業員への周知や意向確認の方法を検討しましょう。4については、業種や職種によって対応ができないこともあるため、努力義務となっています。

改正後の制度の全体像を、厚労省の資料で確認しましょう。

出典:厚生労働省「育児・介護休業法について 令和6年改正法の概要」を加工して作成

個別に周知や早期の情報提供を行うにあたって、以下の内容説明が必要です。

  1. ① 介護休業に関する制度、介護両立支援制度等
  2. ② 介護休業・介護両立支援制度等の申出先
  3. ③ 介護休業給付金に関すること

介護保険制度については、早期提供時のみ案内することが望ましい

説明すべき介護両立支援制度の内容は、以下の通りです。

  • 介護休業
    介護と仕事の両立ができる体制づくりのために一定期間の休業ができる制度です。要介護状態の家族1人につき、93日(3回までの分割が可能)取得できます。雇用保険被保険者であれば、介護休業給付金を取得できます。
  • 介護休暇
    対象家族が1人の場合は年5日、対象家族が2人以上の場合は年10日まで、時間単位で取得できます。
    企業が特に定めない限り、4月1日から翌年の3月31日までが1年となります。
  • 所定外労働の免除
    就業規則などで定められている勤務時間を超える労働(所定外労働)の免除の申し出があった場合は、所定外労働を免除します。
  • 時間外労働の制限
    法定労働時間(1日8時間・週40時間、変形労働の場合は、変形労働の総枠)を超える時間外労働の免除の申し出があった場合は、時間外労働を免除します。
  • 深夜業の制限
    深夜業の免除の申し出があった場合は、深夜業を免除します。
  • 選択的措置(企業はいずれかひとつを選択し、措置する)
    • 週又は月の所定労働時間の短縮措置(短時間勤務)
    • フレックスタイム制度
    • 始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ(時差出勤の制度)
    • 介護サービスを利用する場合、労働者が負担する費用を助成する制度、その他これに準ずる制度

介護関連の法改正の目的は、家族の介護に直面した旨を申し出た従業員に対して、介護両立支援制度が利用しやすくなるように雇用環境を整備することにあります。あわせて、40歳に達する従業員には介護両立支援制度の情報を早期に提供することで、介護に直面した際に離職以外の選択ができるようにします。

2022年4月から、妊娠・出産の申し出をした従業員に対して、出産・育児に関する両立支援制度を個別に周知し、意向確認することが事業主に義務付けられています。介護両立支援制度(給付も含む)についても、同様に準用したものとなっています。

育児両立支援制度との違いは、情報提供の時期です。介護保険料を徴収する40歳、具体的には、以下のいずれかの期間中に実施することが義務付けられます。

  • 40歳に達した日の属する年度の、初日から末日まで
  • 40歳に達した日の翌日から起算して1年間

企業としては、施行日までに早期の情報提供の時期を決定し、制度について説明する資料の準備が必要です。

参考になるリーフレットや動画等が厚労省のサイトに公開されていますので、そちらを活用するとよいでしょう。

以上、2回にわたり、雇用保険法・育児介護休業法・次世代育成対策推進法の法改正について解説しました。

社内での検討や準備に時間がかかる措置内容も含まれています。改正内容を確認し、早めに準備を進めていきましょう。

筆者プロフィール

北條 孝枝(ほうじょう たかえ)
株式会社ブレインコンサルティングオフィス 社会保険労務士
メンタルヘルス法務主任者

会計事務所で長年に渡り、給与計算・年末調整業務に従事。また、社会保険労務士として数多くの企業の労務管理に携わる。情報セキュリティについての造詣も深く、実務担当者の目線で、企業の給与、人事労務担当者へのアドバイスや、業務効率化のコンサル等に取り組むとともに、実務に即した法改正情報、働き方改革などの企業対応に関する講演も多数行っている。

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