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知っておきたい 2026年度税制改正「年収の壁」引き上げの実務ポイント

専門家コラム

最終更新日:2026/2/ 9

寄稿者:北條 孝枝(株式会社ブレインコンサルティングオフィス・社会保険労務士)

2026年度(令和8年度)の税制改正大綱が閣議決定されました。個人所得税・住民税における「年収の壁」対策として、2025年基準からさらに控除額が引き上げられる方向です。 改正法が成立した場合、給与計算や年末調整の実務にはどのような影響があるのでしょうか。現時点での方向性を整理し、今後の実務のポイントを解説します。

さらなる「年収の壁」引き上げの背景

2025年に引き続き、2年連続で「年収の壁」を引き上げる背景には、以下の2点があります。

  • 物価高への対応
    物価上昇に連動して基礎控除等を引き上げる仕組みの創設

    基礎控除については、税制改正時における直近2年間の消費者物価指数(総合)の上昇率を乗じて調整

  • 「178万円」に向けた動き
    就業調整に対応するとともに、中低所得者に配慮しつつ所得税の課税最低限を178万円まで引き上げることを目指し、2026年は特例的に先取りする

税制改正大綱の文言が、「特例的に先取りして引き上げる」としていることからも、次年度以降特例ではなく、本則部分の改正で継続的に引き上げる余地が読み取れます。

2026年(令和8年)の主な改正点

原稿執筆時点の2026年1月26日には改正法は成立していませんが、実務担当者として押さえておきたい変更のポイントは以下の通りです。

  1. ① 所得税基礎控除の改定
    • 合計所得2,350万円以下: 控除額を一律4万円引き上げ
    • 中低所得者層(合計所得655万円以下など): 基礎控除にさらに「特例加算」を実施

2025年の改正と比較すると、合計所得132万円超655万円以下については2027年以降は特例の加算額はなしとされていましたが、期間が2027年まで1年延長され、加算額も変更されています。

  1. ②給与所得控除の最低保証額の引き上げと特例の創設
    • 最低保証額を4万円引き上げて、現行の65万円から69万円とする
    • 最低保証額の特例を創設し、2026・2027年は、さらに5万円引き上げ74万円とする
    • 上記特例の創設に伴い、「給与所得の源泉徴収税額表(月額表、日額表)」、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」、「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」なども改定
  2. ③ひとり親控除
    ひとり親控除について、控除額を現行の35 万円から38 万円に引き上げる
  3. ④所要の措置
    以下について、合計所得金額要件等を4万円引き上げる
    • 同一生計配偶者・扶養親族の合計所得金額要件を、58万円から62万円に引き上げる
    • ひとり親の生計を一にする子の総所得金額等の合計額の要件を、58万円から62万円に引き上げる
    • 勤労学生の合計所得金額要件を、85万円から89万円に引き上げる
    • 家内労働者等の事業所得金額等の合計額の要件を、65万円から69万円に引き上げる

実務対応のポイント

2026年度分の所得税について適用される改正法ですが、施行予定日は未定です。そのため、実務を行うにあたっては以下の点に留意が必要です。

  1. ①「改正前の税額表」使用の可能性
    月々の給与・賞与計算については、すでに公開されている2025年度改正に基づいた源泉徴収税額表を使用します。2025年と同様に年末調整時で新しい税制に基づいて年間の所得税を確定・精算することになります。
  2. ②通勤手当・食事支給等の非課税限度額について
    予定されている改正には、通勤手当(自動車等使用時)の非課税限度額引き上げや、食事支給の非課税枠拡大なども含まれています。これらは2026年4月1日に適用される予定ですが、法案成立の時期によっては、4月の給与計算に間に合わないケースも想定されます。その場合、施行後に精算等の対応が必要となる可能性もあるので、法案の審議状況を注視しておく必要があります。
  3. ③退職者・休職者への対応
    年の途中(法案成立前)に退職した従業員や、12月に給与支給がない休職者等の年末調整については、国税庁からのQ&Aを待つ必要があります。2025年と同様の対応であれば退職時は改正前の税制で処理し、確定申告等で本人が対応する形になることが予想されます。

まとめ 情報を収集し、対応の準備を

今回の改正は計算ロジックが複雑で、給与計算システムへの影響も小さくありません。国会での審議により内容が変更になる可能性もありますが、まずは「改正の方向性」を把握し、自社で使用している給与システムメーカーからの案内、国税庁の最新情報をこまめに確認していきましょう。

筆者プロフィール

北條 孝枝(ほうじょう たかえ)
株式会社ブレインコンサルティングオフィス 社会保険労務士
メンタルヘルス法務主任者

会計事務所で長年に渡り、給与計算・年末調整業務に従事。また、社会保険労務士として数多くの企業の労務管理に携わる。情報セキュリティについての造詣も深く、実務担当者の目線で、企業の給与、人事労務担当者へのアドバイスや、業務効率化のコンサル等に取り組むとともに、実務に即した法改正情報、働き方改革などの企業対応に関する講演も多数行っている。

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