ちょこ解 DX推進は順調ですか?待ったなし「2025年の崖」問題!
最終更新日:2024/10/ 8
経済産業省が2018年の「DXレポート」で指摘した「2025年の崖」。2025年は目前に迫っていますが、その対策、そして克服への道程はいかがでしょうか?
2025年の崖の意味と与える影響、克服するために取り組むべきことについて、改めて考えてみましょう。
「2025年の崖」とは、その要因
「2025年の崖」という言葉は、経済産業省のまとめた「DXレポート」によって注目を集めました。
このレポートでは、企業の競争力強化のためには、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進が必要であること。ただし、既存システムの複雑化、ブラックボックス化により実行は容易ではない、と告げています。この課題を克服できない場合、DXが実現できないだけでなく、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性を示唆しています。この巨大な経済損失と2025年からの下降曲線が「2025年の崖」です。
2025年の崖が発生する大きな要因として、以下の2点が挙げられます。こんなお悩みはありませんか?
- レガシーシステムの存在
- 「このシステムずいぶん前から使ってるよね。項目不足で毎回備考に入力するの大変だから、いい加減直してくれないかな・・作った人誰?何とかして!」
→現実:独自システム故の複雑化やブラックボックス化により対応可能な人材が限られ、維持管理費や人件費がかさんでいる - 「効率化のために新システムを導入したい!予算不足と言うけれど、最近はシステムの導入してないよね?」
→現実:IT予算の8割が古いレガシーシステムの維持管理に使われるため、新たなIT投資にリソースを割けない - 「データは入力して伝票発行したら終わり。社長の欲しがってる書類を作るためにわざわざExcelに数字を転記するなんて無駄な作業は止めたい!」
→現実:増加するデータを活用できずDXを実現できないことから、市場の変化への対応ができず競争力不足に
- 「このシステムずいぶん前から使ってるよね。項目不足で毎回備考に入力するの大変だから、いい加減直してくれないかな・・作った人誰?何とかして!」
- IT人材不足(DXレポートによると2025年に43万人不足すると想定される)
- 「システム改修したいのに、担当者は退職したし、今時このプログラム言語を使える人が見つからない」
→現実:古いプログラム言語を知る人材が退職や高齢化により減少し、供給が難しい - 「うちのシステムを分析して最新技術で提案してほしい。で、どこに頼めばいい?」
→現実:古いプログラム言語と新たなデジタル技術の両方を扱えるIT人材が不足している - 「システム改修を頼んだら大手企業に人材を取られてるから無理って言われた、どうすればいいの?」
→現実:大手企業が自社システム入替えのためにIT人材を確保、そのため中小企業でのIT人材不足が深刻化
- 「システム改修したいのに、担当者は退職したし、今時このプログラム言語を使える人が見つからない」
これらは、企業が直面する悩みごとの一部ですが、実際には深刻な問題です。DXの推進には、これらの課題を克服するための戦略が必要となってきます。
外部的な影響
外部的な影響も考える必要があります。
レガシー(遺産)システムと呼ばれる、過去の技術や仕組みで構築された古いシステム。代表的なものとして大きく取り上げられているのが、多くの企業に採用されている「SAP ERP 6.0」の2025年サポート終了です。サポート保守終了期限は2027年まで延長となりましたが、システム切替や移行等の対応が必要なことに変わりはありません。その対応に起因した、E社の長期システム停止や、Y社の納品遅れは、記憶に新しいところです。これは同製品に限った問題ではなく、他の基幹システムについても同様です。また、オフコンの基幹システムを利用している場合は、より深刻といえるでしょう。
さらに、いまだに高いシェア率を誇るOS「Windows10」も、2025年10月のサポート終了期限が近付いています。しかし、2024年8月時点で、Windows10のシェアは53%を占め、Windows11のシェア44%よりも高いという調査結果も出ています(Statcounter調査)。旧OSをサポート終了後も使い続けることは、セキュリティ面の不安も含め、今後のシステム刷新を行う上での問題となってくるため、見直しが必要です。
デジタル産業への変革に向けて
それでは、これまでの延長ではなく、目指すべき企業(=デジタル産業)の姿とは、どうあるべきでしょうか。2022年に公表された「DXレポート2.2」では、現在のDX推進における課題として、以下の3点を挙げています。
- デジタルを省力化・効率化ではなく、収益向上にこそ活用すべきであること
- DX推進にあたって、経営者はビジョンや戦略だけでなく、「行動指針」を示すこと
- 個社単独ではDXは困難であるため、経営者自らの「価値観」を外部へ発信し、同じ価値観を持つ同志を集めて互いに経営を推進する新たな関係を構築すること
DXを実現するまでの過程は、以下の3段階に分解されるといわれています。
- STEP1.デジタイゼーション(Digitization)
-
- 情報の運用を、紙からデジタル形式に変換して、ペーパレス化を図る
- 「アナログ・物理データのデジタル化」
- STEP2.デジタライゼーション(Digitalization)
-
- デジタル化によって作業の効率化や自動化を図り、負荷軽減を目指す
- 「個別の業務・製造プロセスのデジタル化」
- STEP3.デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)
-
- デジタル技術を活用して、ビジネスモデルを変革する、収益に直結する付加価値の向上を図る
- 「組織を横断する全体の業務・製造プロセスのデジタル化」
しかし、DX推進に取り組むことの重要性が広がる一方で、IT投資の目的の中心はまだ既存ビジネスの効率化にある模様です。JUAS(一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会)の「企業IT動向調査報告書2024」によると、IT予算の約8割が「ランザビジネス予算(現行ビジネスの維持・運営のための予算)」として占められています。この割合は、DXレポートが発表された2018年から然程変化が見られていません。
レガシーシステムの存在が2025年の崖が発生する大きな要因であるために、「DX=レガシーシステムの刷新」という認識が広がっている面もあります。しかしDXの本質は、デジタル技術を通じてビジネスモデルや組織全体を根本的に変革することです。そのためにも、まず、「既存システムを維持する」ことから脱却しましょう。
待ったなし!今から対策できること
いまだにDX推進の具体的な方向性が定まらない場合、目前に迫った2025年の崖の対策として、どのようなことができるでしょうか?デジタル化はDX推進の第一歩となる手段です。そして、デジタル化することによって現在の業務を効率化する、のではなく、収益に直結するビジネスモデルへと変革することが、最終的な目標となります。
まずは、自社が現在どのステップにいるのかを見極めて、対策を進めましょう。
- STEP1「デジタイゼーション」 をこれから実現するならば、
- 現状の業務・システムの棚卸を行い、紙で管理している作業を把握する
- デジタル化するための対応方法、優先順位を検討する
- STEP2「デジタライゼーション」 をこれから実現するならば、
- レガシーシステムの見直しを行う
既存の運用にこだわり安易にカスタマイズを行うのではなく、今抱えている課題や困りごとに対する解決方法や業務そのものに対する見直し、その効果も含め検討する。
- デジタル化されたデータの活用方法を検討する
安易なExcel等の活用は、個人依存のブラックボックス乱立にもつながるため注意する。 また、人手を介さないRPAツールや、ローコード・ノーコードツール等の最新ツールさえ利用していれば大丈夫、ではなく、このツールで課題解決ができるか、必要なデータの活用が容易にできるか、という目線で検討する。
- デジタルデータの蓄積やオープン化を実現する仕組み、その活用方法を検討する
多様化、大容量のデータを効率的に活用するために、クラウドサービスの利用を選択肢として加える。外部に依頼するだけでなく、社内の人材を育成し、新たなスキルを獲得してもらうことも視野に入れる。
- 対外的なやり取りも視野に入れてデータ整理を行うともに、データの集中管理が可能なシステムを検討する
- レガシーシステムの見直しを行う
- STEP3「デジタルトランスフォーメーション」 をこれから実現するならば、
- 全社のレベルでDXの目的・目標を明確にし、社内で共有すると共に、経営者は行動指針を示す
- 示された行動指針に従い、競争力の高いビジネスモデルを検討し、そのための準備を行う
- クラウドサービス、セキュリティ対策等、必要なインフラ・技術に対しての投資を行う
- 必要に応じて、外部の専門家や企業と連携し、最新の技術・知識を取り込む
自社の現在位置を見定めて、今後行うべき対策を早急に把握することが重要となってきます。とはいえ、社内の全システムを一斉に切り替えることは難しいので、重要度や効果の高いものから優先しましょう。
そのために必要となってくるのが、「業務プロセスの可視化」です。「可視化」とは、仕事のやり方を手順化したり、業務の流れをフロー図にすること、ではありません。業務のどこをどのようにデジタル化すれば、どのような課題が解決されて、効果を得られるのか、という方針を明確にすることです。会社のデジタル化の方針が行動指針に従ったものとなっているか、それらを適時確認するためにも、STEP2と3は並行して実施されることが望ましいといえます。
データとデジタル技術を活用して、どのように競争力・収益力の高いビジネスモデルを実現していくか、改めてDX推進と向き合いましょう。
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