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知っておきたい 2026年年末調整対策② 変わる基礎控除・所得控除、今から備える対策のポイント

専門家コラム

最終更新日:2026/09/01

寄稿者:北條 孝枝(株式会社ブレインコンサルティングオフィス・社会保険労務士)

前回のコラムでは、2026(令和8)年度の年末調整における「生命保険料控除の拡充」について解説しました。

今回は、2026年度税制改正の最大の柱である「基礎控除・給与所得控除の引き上げ」と「各種人的控除の要件見直し」を中心に取り上げます。あわせて、実務担当者が押さえておくべきポイントや運用上の留意点、今から準備を進めておく理由を整理して解説します。

1.2026年度税制改正の背景と「年収の壁」見直しの全体像

今年の税制改正は、物価上昇に伴う負担の軽減と、いわゆる「年収の壁」に起因する就労調整(働き控え)の解消を目的としています。従来の固定的な控除体系を見直して、物価動向等を反映しやすい柔軟な構造への移行と課税最低限の引き上げに向けた特例措置が設けられました。

今年の課税最低限は、基礎控除104万円(特例含む)と給与所得控除74万円(特例含む)をあわせた178万円です。

実務担当者は、改正の具体的な内容を正確に把握し、給与計算システムの変更内容の確認や社内アナウンスに備える必要があります。

2.2026年度に変わる基礎控除・給与所得控除・人的控除

2026年度の年末調整では、実務担当者は「控除額」を見るだけでなく、「誰が対象になるのか(要件判定)」を理解しておく必要があります。従業員からの「扶養の対象となる配偶者や子どものパート・アルバイト収入の上限はいくらか」といった問い合わせの増加が予想されます。事前に回答方針等を準備しておくことが重要です。

年末調整で適用される主な変更点は、以下の4点です。

  1. ①基礎控除の引き上げと「特例加算」の判定
    合計所得金額が2,350万円以下の納税者に対する基礎控除額は、一律4万円引き上げられ、従来の58万円から62万円となりました。さらに、合計所得655万円以下(給与収入のみなら850万円以下)の場合は、最大42万円の「特例加算」が上乗せされます。
    中低所得者の手取り増が図られる一方で、所得区分に応じた多段階の要件判定が必要なため、従来よりも計算が複雑化しています。
  2. ②給与所得控除の最低保証額の引き上げ
    給与所得控除の最低保証額が現行の65万円から引き上げられます。4万円の本則引き上げに加えて5万円の特例加算適用により、最大74万円(本則69万円+特例5万円)に拡充されました。これに伴い、「給与所得の源泉徴収税額表」「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」といった法定帳票が全面的に改定されます。
    なお、給与収入が219万1,000円以上220万円未満の場合には、下記のような端数処理の特例があります。控除額が74万円ではない場合があるため、注意しましょう。
出典:国税庁 源泉所得税の改正のあらましを加工して作成
  1. ③ひとり親控除の拡充
    子育て世帯・単親世帯への支援拡充として、ひとり親控除の控除額は、現行の35万円から38万円へ3万円引き上げられました。
  2. ④各種人的控除の所得要件の一律4万円引き上げ
    基礎控除や給与所得控除の改定と整合性を図るため、各種控除や手当にかかる合計所得金額要件等が一律4万円引き上げられています。
    • 同一生計配偶者・扶養親族の合計所得金額要件: 58万円以下 → 62万円以下
    • ひとり親の生計を一にする子の総所得金額等要件: 58万円以下 → 62万円以下
    • 勤労学生の合計所得金額要件: 85万円以下 → 89万円以下
    • 家内労働者等の事業所得金額等の要件: 65万円以下 → 69万円以下

3.年末調整実務における留意点と実務担当者のアクション

実務担当者が確認しておきたいポイントは、以下の3点です。

  1. ①期中給与計算と年末調整の精算ギャップ
    月々の給与・賞与からは、昨年の税制改正に基づいて源泉徴収されています。今回の改正は減税措置を含むため、12月の年末調整では還付額が増加する従業員が多いと考えられます。例年以上に精算の差額が大きくなる可能性があります。
  2. ②給与システムの改正対応予定の確認
    今回の改正では、基礎控除の特例加算や判定要件など内容が複雑化しています。お使いの給与システムが改正内容に対応しているかを早めに確認し、年末調整計算を始める前までに最新版にバージョンアップしておきましょう。
  3. ③従業員への周知と問い合わせ対応への準備
    生命保険料控除の改定(23歳未満扶養で上限6万円・全体12万円据え置き)とあわせ、「控除額が増加する条件」や「扶養要件が58万円から62万円に緩和された点」について、社内FAQの作成を検討しましょう。事前周知は問い合わせの削減に繋がります。

おわりに

2026年度の年末調整は、基礎控除や給与所得控除の特例的な引き上げ、人的控除の所得要件の緩和、さらには生命保険料控除の改定などが適用されます。例年以上に実務負担の増加が想定されるため、制度の趣旨と適用要件を正しく理解し、必要に応じてシステムの準備と社内周知を段階的に進めることが重要です。

年末調整の繁忙期の混乱を未然に防ぐためにも、準備を今のうちから進めておきましょう。

筆者プロフィール

北條 孝枝(ほうじょう たかえ)
株式会社ブレインコンサルティングオフィス 社会保険労務士
メンタルヘルス法務主任者

会計事務所で長年に渡り、給与計算・年末調整業務に従事。また、社会保険労務士として数多くの企業の労務管理に携わる。情報セキュリティについての造詣も深く、実務担当者の目線で、企業の給与、人事労務担当者へのアドバイスや、業務効率化のコンサル等に取り組むとともに、実務に即した法改正情報、働き方改革などの企業対応に関する講演も多数行っている。

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