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ちょこ解 どう変わる?建設業法等の改正

ちょこ解シリーズ

最終更新日:2025/1/ 7

2024年6月7日に「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律」が国会で可決・成立しました。2025年中に完全施行される予定ですが、一部は12月13日に施行されています。

今年の4月に適用された働き方改革関連法に続き、今回の建設業法等改正で変わる内容について、企業としてどのように対応すべきか考えてみましょう。

建設業法等改正の背景

今回の建設業法等改正は、建設業の労働者を確保するために、処遇改善・働き方改革・生産性向上を促すことを目的としています。

地域のインフラ整備の担い手であり、災害時における地域の守り手である建設業労働者。しかし建設業は、他業種よりも賃金が低く、労働時間も長いため、担い手の確保が困難という課題を抱えています。賃金が低い原因のひとつには、昨今の資材高騰分について適切な転嫁が進まず労務費を圧迫している、という背景もあります。

出典:一般財団法人建設物価調査会「建設物価 建設資材物価指数®」

建設業労働者の環境改善に向けて、2024年4月に以下の働き方改革関連法が適用されています。

  1. 労働時間の上限規制
    時間外労働時間の上限は、原則として月45時間以内、年360時間以内(例外あり)
  2. 時間外労働の割増賃金率の引き上げ
    60時間を超える場合は50%に引き上げる
  3. 同一労働同一賃金
    雇用形態に関係なく、同じ職場で同じ仕事内容であれば、同一賃金を支払う

持続可能な建設業として、今後も「地域の守り手」という役割を果たし続けられるように、今回の建設業法等改正が行われます。

どう変わる?そのポイント

今回の建設業法等改正による変更点のポイントは、大きく以下の3点となります。

  1. 労働者の処遇改善
    • 著しく低い労務費等の見積り提出や見積り変更依頼は禁止
      労務費の正当性については、中央建設業審議会が作成する「労務費の基準*」で判断されます。
    • 正当な理由がなく、通常必要と認められる原価に満たない請負契約の締結は禁止
      原価割れ契約は労務費の圧迫へとつながるため、それらの防止を意図しています。

*労務費の基準の勧告は、2025年11月頃を予定しています

  1. 資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止
    • リスク情報を受注者から注文者に通知することを義務化
      資材高騰に伴う請負代金等の「変更方法」を契約書記載事項として明確化し、そのリスク情報を受注者から注文者に通知するよう義務化されます。
    • 資材高騰時の契約変更協議に対し、注文者は誠実に応じる努力義務
      リスク情報を通知した受注者は、資材高騰が顕在化した場合に契約変更協議の申し出ができます。その申し出に対し、注文者は誠実に協議に応じる努力義務があります。
      これらは、資材高騰分の転嫁ができずに、労務費へしわ寄せとなることの防止を意図しています。
変更契約条項の有無、契約変更協議の申し出状況、契約変更状況

出典:国交省「令和5年度 適正な工期設定等による働き方改革の推進に関する調査」

  1. 働き方改革と生産性向上
    • 工期ダンピングは受注者、注文者ともに禁止
      通常必要な工期よりも著しく短い期間での契約は、工期不足による作業員の休日出勤や残業等の長時間労働へとつながります。週40時間労働を原則として適切な見積り・提案を行うことが大切です。
    • 工期が変更となる「おそれ」情報を注文者に通知する義務
      資材の入手困難等により工期変更が必要となった場合は、受注者は注文者に対して工期の変更を協議できます。注文者は、誠実に協議に応ずる努力義務があります。
    • ICTの活用
      請負代金が1億円未満(建築一式工事については2億円未満)の工事について、条件を満たせば、現場技術者を兼務できるようになりました。たとえば、ICTを活用した遠隔からの現場確認、といった行為が該当します。

対策のポイントはバックオフィス業務

労働時間を適切に管理できる仕組みを作り、適正な価格、工期で施工を行うことが、建設業法等改正への対応へとつながります。それはすなわち、人手不足の解消に向けた対策ともいえます。

まずは、以下の2点について対策を考えましょう。

  • 人事・労務の管理
    • 労働環境の改善には、まず正確に勤怠状況を把握し、その上で管理を行うことが必要です。
      勤怠管理を手書きの台帳やExcelで行っている場合は、システムの導入も検討しましょう。
    • 技能者の資格や経験を登録・蓄積する「建設キャリアアップシステム(CCUS)」の活用も検討しましょう。
      レベルに応じた手当ての支給や賃金体系は、企業の評価を高め、人材確保の要因となります。
  • ITツールを取り入れた業務の効率化
    • 資材の価格高騰や納期遅延情報の把握、注文者への通知タイミングを適切に管理する必要があります。
      過去の原価の確認、いつ情報を取得したか、通知を行うか否かの判断を誰が行ったのか等の情報も重要となります。それらの履歴や承認記録の手段として、ワークフローの導入も有効です。
    • 契約書に、請負代金の変更方法や不可抗力に伴う工期変更等が記載されているか、確認しましょう。
      契約書および元となる見積書の確認にあたって、紙の書類で該当箇所を探すのは大変手間が掛かります。書類の電子化、文書管理システムの導入、電子契約等の活用も検討しましょう。
    • 現場ごとの設計図や写真等の情報について、ICTを活用した効率化が努力義務となっています。現場では複数の企業が関わるため、セキュリティの確保が重要となってきます、考慮しましょう。

建設業の労働者の処遇改善には、適切な賃金引き上げが必要です。そのためにも、正確な原価管理の重要性が増しています。現状を正しく把握し、必要な管理作業を効率的に行うためのバックオフィス業務の重要性を改めて認識し、対応を進めましょう。

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