ちょこ解 まだ先だと思ってる?トラック新法の対策
 
最終更新日:2025/10/31
社会的インフラとして不可欠な物流。しかし、長時間労働・低賃金によるドライバー不足をはじめとした物流停滞への危機感が高まってきたことから、次々と「安全・安心」「持続可能」な物流業界を目指すための法改正が行われています。
ここでは、2025年6月に公布され、2026年以降に施行される「貨物自動車運送事業法」の改正内容と、改正に対応するうえで重要な「書面の記録・管理」について、ちょこっと解説します。これまでのような、口約束や慣習は今後は通用しません。企業としての信頼性を高めて、ドライバーをはじめとした人材の定着、収益の安定を図るために必要な対策を考えましょう。
そもそもトラック新法って何?
2025年6月に公布された通称「トラック新法」と呼ばれる法改正は、正式には、
- 貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律
- 貨物自動車運送事業の適正化のための体制の整備等の推進に関する法律
という2つの長い名称の法律から構成されています。
2024年からトラックドライバーの時間外労働の上限規制が始まりました。これまでの長時間労働を前提とした業務体制が崩れることで、輸送力不足が深刻化し、「2030年には34%の輸送力が不足する(※1)」との試算もあります。そのような状況になることを避けるために物流業界が直面している課題を改革し、持続可能な物流インフラの構築を目的とした制度改正になります。
※1:「物流革新に向けた政策パッケージ」(内閣官房)より
2025年4月には、運送事業者の管理体制強化を目的として以下の内容が施行されました。
- 運送契約時に、提供する役務の内容と対価などを記載した書面交付の義務化
- 実運送体制管理簿作成の義務化
- 荷待ち時間・荷役作業記録の義務対象となる車両の拡大
- 元請け事業者が、適正な運賃で多重下請けを避けて依頼することの努力義務化
- 軽トラック事業者への規制強化
トラック新法の5つのポイント
健全な取引関係と責任の明確化に向けて、2025年4月1日に施行された内容からさらに一歩進んだ対策が、2026年以降、段階的に施行されます。そのポイントは大きく5つです。
- トラック運送事業の許可は5年ごとの更新制を導入(2028年までに施行)
 一度取得すれば継続的なチェックもなく「無期限」であった事業許可は、5年ごとに法令順守や業務管理体制について審査を受ける更新制へと変わります。運行記録や勤怠管理といった帳簿の記録の保管はもちろん、その管理体制が機能しているかどうかが問われます。
- 「適正原価」を下回る運賃・料金の禁止(2028年までに施行)
 国土交通大臣が定める任意の「標準的運賃」を廃止して、法的強制力のある「適正原価」が告示されます。適正原価を下回る契約は違反とみなされます。ドライバーの処遇改善、安全管理のためにも、運送コストを物流事業者の内部努力でまかなうのではなく、適正な運賃で対処することが必要です。
- 再委託を2回以内に制限する(2026年6月までに施行)
 多重下請け構造を是正するために、再委託は2次請けまでに制限されます。管理責任は元請事業者に課され、委託先、再委託先を把握し、実運送体制管理簿に記載することが義務となります。
- 白トラ(無許可業者)への委託の禁止(2026年6月までに施行)
 無許可業者に依頼した荷主に対して、罰則(100万円以下の罰金)が科されます。元請事業者も行政処分や社名公表の対象となりますので、顧客からの信頼を失うこととなります。許可番号・有効期限で「白トラ」ではないことを確認することが重要です。
- ドライバーの待遇改善の義務化
 長時間労働・低賃金といったドライバーの労働環境の課題解決のために、能力・経験・技能に応じた評価制度を導入し、適正な賃金を支払うことが義務となります。そのためにも、適正な運賃の契約、ルールに則った運行を実施すること、また自社の労務実態を把握し可視化することが必要となります。
現状把握はできていますか?
たとえば、下記のようなチェックリストを使用して、自社の状況を把握することから始めてみませんか。
 
チェックが付かない項目があった場合は、早急に管理体制の見直しを検討しましょう。
全国の拠点で点呼未実施や管理体制の不備が確認された日本郵便が、5年間の一般貨物運送事業の許可取消処分を受けたことは記憶に新しいかと思います。対岸の火事ではなく、トラック運送事業の許可更新に向けて、自社のコンプライアンス体制についても改めて確認することが大切です。
取り組むべき対策とは
上記の通り、「トラック新法」では、荷主や元請事業者の管理責任に言及しています。「知らなかった」「しっかり管理していると思った」といった言い訳が通用しない制度になるからこそ、自社の管理体制が問われます。もしも「白トラ」への依頼や多重下請け構造に関係していた場合、責任の追及を避けるためにも、関与を否定できる契約書や記録の存在が重要になってきます。また、記録の有無だけでなく、その運用実績についても注視されます。
これらは単なる法令順守にとどまらず、取引先から「選ばれる物流業者」になるための対策でもあるのです。まずは、社内の体制を整備し、必要な対策を検討することから始めませんか。
改正に合わせて行うべき対策は多く、その手段としてシステムの活用は有効です。2026年6月までに、再委託の2回以内制限と白トラへの委託禁止が施行されます。早めに準備をして備えましょう。
詳細情報は、国土交通省のホームページをご覧ください
 https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_mn4_000014.html
国土交通省では運行管理の高度化に対する支援として、デジタコ購入における補助金を交付する「事故防止対策支援推進事業」を実施しています(2026年1月30日まで 予算がなくなり次第終了)
 詳細情報は、被害者保護増進等事業費補助金事務局のホームページをご覧ください
 https://hogo-zoushin-r6h.jp/download1_2.html
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